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コラム「灸術について」お灸 こぼれ話

◆徒然草こぼれ話
有名な『徒然草』(吉田兼好;鎌倉時代)や『奥の細道』(松尾芭蕉;江戸時代)に足三里へのお灸が紹介されています。

◆百人一首こぼれ話
百人一首の51番目にある、藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)の歌に、もぐさという言葉が登場します。
かくとだに えやはいぶきの さしも草
さしも知らじな 燃ゆる思ひを

《現代意訳》これほどまで、あなたを思っているということさえ打ち明けることができずにいるのですから、ましてや伊吹山のさしも草が燃えるように、私の思いもこんなに激しく燃えているとは、あなたは決して知らないことでしょう。
《解説》
「かくとだに」は、〈こんな状態ですけれど〉
「えやはいぶきの さしも草」は、「えやは」は反語。ここでは〈言うことができようか。いや、とてもいえませんよ〉
「いぶき―伊吹」は〈言う〉にかけていて、伊吹(栃木県)はもぐさの名産地であるから「さしも草」にかかります。
「思ひ」の「ひ」は〈(燃ゆる)火〉にかかります。
※「実に、がんじがらめに縁語でつながっているのですが、その技巧がとびきり高度でデリケートなので、嫌みにならず、むしろ真情を伝えていて楽しい」と田辺聖子さんは書いてます。こんな素敵な恋歌を贈られたのはどんな女性かと思われますが、あの才女の清少納言かもしれないといわれてます。


◆平家物語こぼれ話
「平家物語」や鎌倉時代の「吾妻鏡」にもお灸は登場します。「やいと」という名前で一般的な医術として行われていたという記録が残っています。

◆戦国時代こぼれ話
戦国時代の武将たちも戦の前にお灸をすえていました。

戦で怪我をした際にもぐさを使って傷口を焼いて肉を盛り上がらせ、血止め、消毒をしていたのです。

◆江戸時代こぼれ話
江戸時代になると、旅にも携帯するようになりました。旅の途中、川を渡るとツツガムシ病に感染する恐れもあることから、お灸で予防していたそうです。
「足の三里に灸を据えていない人と一緒に旅をするな」というのが庶民の常識でした。病気にかかりやすく、迷惑を被るからというわけです。奥の細道の全行2400キロを歩き通した松尾芭蕉も、もちろん足の三里にお灸をすえていました。
※ツツガムシ病とは・・・ダニ類の一種。戦前はアカツツガムシが媒介する北陸~東北の河川領域で、夏に発生する風土病として恐れられていました。

◆慶安の御触書こぼれ話
お灸を勧める「慶安の御触書」
これは慶安2(1649)年に江戸幕府によって全国の農民に対して公布された触書で、いわば法律にあたるものです。
「春夏秋冬 灸をすえて、病気にならないよう常常心がけよ。どれほど農業に励もうともしても、病気になってはその年の生産が上がらず、財産をつぶすことになるから、お灸をすえるという心がけは大切であり、女房子供もおなじことである」とお灸を奨励し、お灸をすえないものを罰しています。このことから、法律にしてまでお灸を勧める高官が、お灸の効果を予防医学や健康法として評価していたのです。そして、当時の民衆もまたお灸の効果を知っていたことです。お灸に対する当時の認識は現在より遙かに高い水準にありました。

◆二日灸
二日灸とは、旧暦の2月2日と8月2日にお灸をすえることで普段お灸をするより2倍の効果があるとされる日のことです。さらに病気や災難に遭わず無病息災でその年を暮らせる、長寿になるなどとも言われています。なかでも2月に行う二日灸は2月の別名でもある如月灸(きさらぎきゅう・きさらぎやいと)とも呼ばれる伝統的な習わしです。
二日灸という言葉は、俳句における季語としても使われています。現在では馴染みのない言葉ですが、季語として使われるほどかつては一般的な習慣だったと言えるでしょう。2月2日は、春の季語として使われ「春の灸」、8月2日は秋の季語として使われ「秋の灸」とも「後の二日灸」とも表現されます。

この季語を使った俳句としては
小林一茶の「かくれ家や猫にもすへる二日灸」
正岡子規の「花に行く足に二日の灸(やいと)かな」
などが挙げられますが、日常の様子を詠んだ俳句であることから、この風習が一般的に行われていたことを伺うことができるでしょう。

では、なぜ2月と8月なのでしょうか?旧暦の日にちを新暦で考える場合は毎年同じ日が当てはまるわけではありませんが、旧暦の2月2日は新暦のだいたい3月中頃にあたります。冬から春への季節の変わり目で体調を崩しやすく、地方ではそろそろ田植えなどの農作業が始まり忙しくなる時期です。また旧暦の8月は新暦の9月にあたり、農作業では収穫の時期なのでやはり忙しくなる時期です。このような時期に身体の調子を整えるため、習慣としてお灸をすえると良いと考えられたのでは言われています。いずれにしても、季節の変わり目や農作業の転機に則した習慣は、庶民の生活に根ざした風習だったといえるのではないでしょうか。
また、江戸時代には儒学者の貝原益軒(かいばらえきけん)がその著書である『養生訓』の中で「脾胃(胃腸)が弱く、食が滞りやすい人は毎年2月8月に灸をすえるとよい」とも記しています。養生訓は健康法を記した指南書で、このことからも2月と8月にお灸をすえることに意味があり、一般的なことだったといえます。
※昭和の終わりから平成の初め頃、『先代の先生(初代祖父)に「身体の調子が良くても3月と9月にはお灸に来なさいよ」と言われているのでどこも悪くないけどお灸に来ました。』という患者さんが何人もみえたことを覚えていますが、後になってこの二日灸のことなのだということがわかりました。

◆足三里こぼれ話
昭和初期、原 志免太郎(はら しめたろう;明治14年生まれ)が灸に関する論文で初めて医学博士を取得。自ら『足三里』に灸をすえて養生し、104歳まで現役医師として働き、平成3年に男性長寿日本一である108歳でこの世を去りました。

灸術は体のどの部位の症状にも効果を期待できるものです。
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