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コラム「灸術について」もぐさとはなにか?

熱源として、なぜもぐさを使うのか?ということを説明します。
 
先ほどの原志免太郎博士は「万病に効くお灸療法」の中で次のように書いておられます。
「身体を火傷させるのに焼き火箸を用いるのと、もぐさを用いるのと優劣は興味ある問題である。皮膚を焼くということは同一であるが、火傷後の感覚は全然違う。タバコの火でも焼き火箸でも、これによる火傷はあとが意地悪く痛くて、とても耐えきれないが、もぐさ灸による火傷は、後がさっぱりしていて、全く苦痛を残さない。火傷という結果は同一でも、お灸にもぐさを用い出した古人の尊い経験は、優に博士論文をも構成すべき一大発見である」と。


もぐさは、キク科のヨモギから作られます。ヨモギは、田畑の畦道や野山に自生する多年草で、お餅に入れてヨモギ餅を作るので、餅草とも言います。
もぐさを作るときは、5月から7月ごろにもぐさがあまり大きくならない前に採取し、天気の良い日に天日干しします。その後、冬まで暗室保管乾燥させた後に火力による乾燥を行います。これを一番石臼で粉砕して、ふるい機で選別すると荒い温灸製品(下級もぐさ)程度となります。上級のもぐさを製造する場合は、2番~3番臼で更に細かくすり潰します。回転ふるい機でもぐさと異物を選別し、さらに「とうみ」という機械にかけて不純物を徹底的に除去し、高級もぐさに仕上げます。高級品は原料のヨモギから2~3%くらいしか採れないと言われてます。
よいもぐさを造るにはヨモギの裏面の柔毛(毛茸と腺毛の2種)の量や品質が非常に重要になります。この腺毛には、揮発性の油が含まれていますが、それが燃焼すると温和な熱を発し、身体の深部にまで届く浸透力のある熱が一種の爽快感を与えます。この腺毛の割合が多いほど火立ちが良く(火が付き易く、一瞬に燃え尽きる)、熱さを温度の割に感じない極上品のもぐさになります。この揮発性の油には、チネオール、テルペン類、アルコール類などが含まれています。もぐさの香気はこれらの成分によるものです。このような熱は、他の植物では得られません。ですから熱ならなんでも良いというわけでなく、もぐさを使うところに意味があるのです。
なおヨモギは、お灸に使われるだけでなく、昔から薬効の高い民間薬として使われてきたこともよく知られています。ヨモギで作った青汁や煎じ汁は、とくに解熱と整腸の効果が高い他、駆除剤や利尿剤、止血剤としても使われます。

もぐさの効果を示すおもしろい実験があります。これは、東洋鍼灸専門学校の初代校長 柳谷素霊先生がお弟子さんにさせたというものです。
直径30㎝ほどの数個のスイカに、100回以上繰り返してもぐさのお灸をすえました。その一方で、綿とわらをもぐさと同じように細かく粉にして固めて、同じすいかに、もぐさのお灸と同じ回数だけ灸をすえて、すいかにどんな変化が起こるかを見たのです。
その結果、綿とわらのお灸の方は、表面の固い皮が煮えてブヨブヨになってしまいましたが、もぐさによるお灸では、皮の表面に褐色のヤニが付いただけでした。そこで、そのスイカを割ってみると、綿とわらの熱は固い皮だけをブヨブヨにさせたのに、もぐさの方は、熱が深く伝わったことを示す黄色いスジが赤い果肉の中にはっきりついており、スイカの反対側まで通っていたといいます。

この実験結果から、もぐさの燃焼熱が遠赤外線のように波長が長く、温度はさほど高くないのに、深く浸透する深達力の熱線だという事を証明しています。

灸術は体のどの部位の症状にも効果を期待できるものです。
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